2007年09月29日

『誰も行かないところへは、誰かが行かなければいけない』

長井健司さんと言うジャーナリストの方がミャンマーで亡くなった。
最初は流れ弾により死亡したとの見方が大勢だったが、フジTVの入手した映像を見れば、かなりの確率で軍の兵士による射殺と考えられる。



まず、長井さんのご冥福を祈ります。

紛争のある場所や戦地といった最前線で取材することが彼のビジネスであり、恐らく際どい映像や命懸けの仕事になればなるほど、その仕事の価値は高かったはずであり、今回の取材にも相応のRISKがあり、相応の覚悟はされて現地に入られた筈である。ただ、非武装の僧侶と市民のデモを軍政府が弾圧し、一般市民を射殺する、そしてジャーナリストを至近距離から射殺すると言う行為は、想定し得る中でも最悪のケースだろう。この行為は決して許されるものではないし、許してはいけない。僕は今、心の底から怒りを感じるが、この怒りが日本人の同胞が理不尽に殺されたことから発しているのか、それとも最前線で真実と向き合い闘うことを良しとしていたと思われる1人のプロフェッショナルをこんな形で虫けらの様に殺されたと言う屈辱感から発しているのか、若しくは未だに世界が不条理に溢れ理不尽な死が一方的な暴力によりもたらされることを映像で突き付けられて怒りが湧いてきて居るのか、全く分からない。恐らくその全てではないか。

武装した政府の軍隊が、非武装のジャーナリストを意図的に射殺する、と言うのは、明らかに報道への挑戦であり、それは真実を追求すべく闘うプロフェッショナルへの挑戦だ。それは自由への挑戦でもあり、我々の知への欲求への挑戦とも言える。

戦時下にあるイラクや未だに平和が遠いアフガニスタンなどにおいて、テロリストや武装した非合法組織等々が非武装の人々を傷つけると言うのは想像出来るし、彼らには従うべき法は無い。いや、従うべき我々と共有可能な法が無い。だが、ミャンマーは軍事政権とは言え、政府軍だから、国がジャーナリストを殺したとも考えられる。

このことの持つ意味は怖ろしく深いのではないか、と思うのだが、どうなのだろうか。国際法の知識は特に無いから、どうしても倫理的情緒的な議論に終始してしまうのはお許し願いたい。

ただ、このネットに繋がれ、世界中が情報を即座に入手できる時代にこのような蛮行を実行し、しかもそれを映像で切り取られると言う極めて稚拙で愚かな行為を行った国家・政府が長く生き残れるとは思えない。
長井さんの死はその破片であり、数多くの死がミャンマーに横たわっている。民主化の波は一度引いたとしても何れより勢いを増して押し寄せるだろう。

民主化が全てとは思わない。アメリカ人が信じる様に、世界中の国家を民主化することが世界平和に繋がると無邪気に信じることは出来ない。でも、自由を望む人々をただ踏み付ける政権は何れ滅びると言うのは歴史の常道だろう。愚かな指導者にはそれが見えないのだろうか。

何れにせよ、日本のマスコミの論調は僕には理解し難い。メディアはもっと声を上げるべきだ。メディアは国を突き上げるべきだ。ジャーナリストの誇りと覚悟を踏み躙るこの蛮行に対してメディアは確固たる意志を持ちミャンマー政府に掴み掛かるべきじゃないのか。決してメジャーではない会社の契約ジャーナリストだからか?だからこんなに他人事の様に伝えるのか?

僕には分からない。偏向報道とか、そういう次元じゃないと思う。命とプライドとメシの種と自由、その全てを侵すこの行為にもっと激しい怒りを抱き、その拳を握らないのならば日本の大手メディアはもう駄目だろう、と勝手に思っている。

APF通信社の山路代表の言葉は闘う意思を失っていない。魂は既得権益に侵された大手メディア以外に宿っている。
「長井の口癖は『誰も行かないところへは、誰かが行かなければいけない』だった。この状態で取材が後退することを長井は好まないと思う。別の記者が望むならば社としても支援していく」

意志は紡がれる。一つの命が喪われても、その命が紡がれる意志を生んだのならば、ほんの少しだけ、救われるというのは余りにご遺族に対して失礼だろうか。


例え紡ぐものの動機が金銭や名誉欲であったとしても、プロは結果を見せればいい、公の目的を果たせばいい、と僕は思います。
posted by Harvey at 07:52| ニューヨーク ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記みたいなもの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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